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[FIAT×MIJP Vol.15] きめ細やかで粘り強い女性達が織る、麗しき山形緞通の世界

文=河辺さや香 写真=倉谷清文

 

世界中のVIPを足元からおもてなしする、山形の高級絨毯

FIATがNPO法人、メイド・イン・ジャパン・プロジェクトとコラボし、日本の優れた工芸品に光を当てるプロジェクト。第15弾は、山形県の山辺町にある「オリエンタルカーペット」社にて、「山形緞通」ブランドのFIATオリジナルラグを作っていただくことになりました。 世界に名が知られる高級絨毯メーカー「オリエンタルカーペット」は、その技術と芸術性を高く評価され、皇居新宮殿や歌舞伎座、京都迎賓館、そしてバチカン宮殿ほか世界の著名な建築でも使用されるという輝かしい実績を持っています。今回は昭和初期から始まったという山形の絨毯づくりの歴史と技法を学びながら、山形県村山地方の名所と職人魂溢れる人々を訪ねます。

   

「古典ライン」と呼ばれる日本の古典を題材にした手織りの絨毯。手前は能装束の柄をモチーフにした「千秋」、奥は「桜花図」。

   

地域振興のために始まった山辺町での絨毯づくり

山形県の山辺町は、かつて染色の町として栄えた場所でした。この地を流れる須川は魚が泳げないほど鉄分が多く染色業に向いていたため、自然発生的に産業として発展したというのが歴史の背景。「オリエンタルカーペット」の原点となる会社も、木綿づくりに携わっていました。 しかし昭和10年前後、不運なことに冷害凶作や金融不安に見舞われます。特に女性を取り巻く環境が非常に厳しかった当時、「オリエンタルカーペット」の創業者・渡辺順之助氏は、地域振興のためにどうにかして女性たちが働ける場所を生み出そうと、絨毯業を決意したそうです。 「オリエンタルカーペット」の社長・渡辺博明さんはそれについてこう話します。 「当時絨毯を使う生活をしていた人は、伯爵邸など、地位の高い方たちでした。創業者である祖父は、だからこそ絨毯づくりが景気の波に左右されない仕事になると確信。そこで織物技術を学ぶために、中国から7名の技術者を招き、たった2年で山形に絨毯づくりを根付かせました。これが山形緞通の始まりです」 当時習得された技術は、代々女性たちを通して大切に受け継がれます。現在緞通を織っている職人さんも、なんと全員女性だそうです。このことについても、山形ならではの理由があると渡辺さんは強調します。 「たった2年で絨毯づくりが根付いたというのも、山形の女性ならではの生真面目さが、ものづくりに向いていたからだと思うんです。全国にいろんな絨毯メーカーさんがありますが、我々は山形女性のきめ細やかさが生かされているのが特徴だと思います」

 

   

フィアットラグの織りを担当した、職人の安達朋美さん。「ロゴは少しのズレも許されないもの。アルファベットの文字の線を真っ直ぐにすること、それと回りの白い部分を歪まないように丸く織るのが大変でした」。完成したフィアットのラグ。遠目から見ると、それが絨毯だとは気づかないほどの見事なグラデーション。右はFCAジャパン マーケティング本部長ティツィアナ・アランプレセ。

 

 

本社の社屋は小屋まで含めて全7棟。敷地内には松の木が美しい庭園もある。絨毯にマーセライズ(艶出し加工)を行う工場にて。(左)「オリエンタルカーペット」の社長・渡辺博明さん。

 

糸づくりから一貫生産することで、美しいグラデーションが生まれる

山形緞通の特徴としてもう1つ忘れてはならないのは、糸づくりから染め、織り、アフターケアまで、すべて一貫生産で行っているということ。日本の織物は一大生産地である関西から分業化し、そこから発展してきた歴史がありますが、「オリエンタルカーペット」が始めた山形緞通は、全てこの地でまかなうしか方法がありませんでした。それが今、大きな個性になっていると渡辺さんは語ります。 「糸を染めるところからやっている会社だからこそ、我々の最大の特徴でもある、繊細なグラデーションを生み出すことができるんです。それぞれの職人さんの思い、そして技術を伝えられるような、いいものづくりをしていこうと思っています」    

 

染色課長の工藤正信さんは、この道40年以上。「薄い色は日光に弱く、濃いものは摩擦で汚染したり、洗濯で色落ちしてしまう。このあたりは特に慎重に扱いたい色ですね。いろんな絨毯メーカーさんがあるけど、ここでしか作れないものはたくさんあります。それが私の誇りです」。「オリエンタルカーペット」でこれまで使った色はなんと2万色。その膨大なサンプルに無いものは、何種類かの色を組み合わせて新しく作られる。

 

 

細かな設計図をもとに、縦糸に糸を結びカットしていく「手織」。全て織った後には、シャーリング(表面仕上げ)や、模様の輪郭を浮き立たせたり立体的に見せるためにのカービング(浮き彫り)という作業が控えている。本染めされた糸を使って実際に絨毯が織られている様子。織り方は2種類あり、こちらは図案に合わせフックガンという工具で織る「手刺」。

 

  実は、長い歴史のある「オリエンタルカーペット」が個人ユース向けの「山形緞通」というブランドを設立したのは、ほんの6年前。それまで主に海外のVIP向けに納入されていた絨毯を、国内の個人客に向けたのは、山形のものづくりをもっと広めたいという全社あげての願いがあったからだそうです。今回のプロジェクトが実現したのも、その思いがきちんと広まり、そして我々FIATの元にも届いたからだと言えるでしょう。     SHOP DATA

名称 オリエンタルカーペット株式会社
住所 山形県東村山郡山辺町21
電話番号 023-664-5811
Webサイト http://yamagatadantsu.co.jp/

   

稲杭が並ぶ棚田に、日本の原風景を見る

渡辺社長のお話に山辺町の地理について少し言及がありましたが、「オリエンタルカーペット」から車で15分ほどの距離に、農林水産省が「日本の棚田百選」に認定している見事な棚田「大蕨の棚田」があります。日本の原風景が見られる場所だと聞き、さっそく向かうことにしました。しばらく山道を走ると突如視界が良くなり、美しい段々の田んぼが見えてきます。 かつて大蕨村と呼ばれたこの地方は河港へのアクセスが優れており、また藩領同士を結ぶ馬継点でもあったため、人の往来や物資の輸送が頻繁に行われていたそうです。そこで財を成した地元の豪商・豪農の稲村七郎左衛門家が、平坦な耕地の少ない大蕨において商業資本を基に農地の開墾をおこない、それが現在に残る大蕨の棚田となったとか。 ここにも、特徴のある地形を活かし、その発展を大切に後世までつなげるという山辺町の人々の知恵を、垣間見ることができました。  

 

傾斜や凹凸がある道でも、抜群のパフォーマンスを見せてくれたFIAT 500X。稲が刈り取られたあとの棚田は黄金色から一転、草色に。手作業で行う大変さから、稲を天日干しする杭掛け作業は今では珍しい光景とか。

 

    SHOP DATA

名称 大蕨の棚田
住所 山形県東村山郡山辺町大蕨1164番地1(山辺町役場中支所)付近
電話番号 023-667-1106(山辺町産業課農村整備係) 023-666-2113(山辺町役場中支所)
Webサイト https://www.group-nofunokai.jp/ (グループ農夫の会)

 

 

湯処・山形でも屈指!大正ロマンの風情が溢れる銀山温泉

続いて向かったのは、ドラマ「おしん」の舞台にもなった温泉郷・銀山温泉。江戸時代初期に大銀山として栄えた「延沢銀山」の開発途中に出湯したというのが、銀山温泉の名の由来。当時から山師たちに利用されてきた湯処の歴史は、既に400年以上にのぼります。 「銀山川を挟んで両岸に建つ温泉宿は、大正中・後期から昭和初期にかけて造られたものです。木造の三層・四層の町並みに、大正文化の面影が見えますよね」と、銀山温泉観光案内所の戸津奈穂子さん。 歩道に並ぶガス灯に明かりが灯る時間には、さらにノスタルジックな雰囲気に。また、真っ白の雪景色を楽しみに、海外から訪れるゲストも多いとか。「豪雪地の尾花沢市は、どんなに雪が降っても万全な対策をするので、どうぞご安心を」(戸津さん)とのことなので、山形市からのドライブには絶好の目的地となるでしょう。    

 

ノスタルジックな町並みにも違和感なくマッチする500X。(特別な許可を得て車両を撮影しています)

 

左上:ほとんどの旅館が川沿いにあるのは、川沿いに湧き出した源泉をそのまま内湯にしているのが理由。
右上:銀山川の両岸には、老舗旅館が建ち並ぶ。写真は古山閣。
左下:取材時には偶然、山形大学の花笠サークルによる花笠踊りを見る機会に恵まれた。尾花沢市は花笠踊り発祥の地でもある。
右下:温泉街の最奥にある白銀(しろがね)の滝は、小さいながらも豊かな水量。付近には、銀山の面影が残る国指定史跡の銀坑洞もある(冬期は閉鎖)

 

SHOP DATA

店名 銀山温泉
住所 山形県尾花沢市銀山新畑
電話番号 0237-28-3933(銀山温泉案内所)
営業時間 店舗による
定休日 店舗による
Webサイト http://www.ginzanonsen.jp/
※冬期の積雪時は日帰り用の駐車場が準備できない場合もあるので、 その際は「銀山観光センター 大正ろまん館」の駐車場へ。(http://ginzan-taishoromankan.jp/

 

イタリア仕込みのハムをもてなす名手の元に、全国からファンが殺到

山形には美味しい名物料理が数あれど、実は“世界で唯一”をうたう隠れた名店があります。山形市のイタリア料理店『イルコテキーノ』です。オーナーシェフの佐竹大志さんは、イタリアで6年間の修業を積んだあと、地元山形にお店をオープン。2018年11月に6年目を迎えました。 「こんなに何十種類もハムを出す店は、世界でここだけでしょうね」と佐竹さん。笑いながら店内の冷蔵庫に視線を送ると、お店の特徴についてこんなふうに説明してくれました。 「イタリアで修行していたとき、これまでに見たこともないハムにたくさん出逢ったんです。それから肉を保存食として食べる文化に興味を持ち、本格的に学びました。それを今自分の店でやっています。日本では珍しいんでしょうね。いつの間にかいろんなところからお客さんが来てくれるようになりました」。  

 

右がオーナーシェフの佐竹大志(ともゆき)さん、左がマネージャーの浦上亜子さん。お二人はイタリア修行時代からの同志。

 

  仕込んでいるハムは40種類以上。常時30種類は出せる用意があるという『イルコテキーノ』には、ほとんどのお客さんが佐竹さんの作るハムの盛り合わせをお目当てにやってきます。お隣宮城県の仙台からバスで通う人もいれば、わざわざ飛行機で駆けつけるファンもいるとか。「日本のお客さんは生ハムだけだと飽きちゃうから、本来イタリアにはない加熱系のハムやソーセージをオリジナルで作るようになりました」と佐竹さん。とことん1つのことを突き詰めていく姿からは、職人魂を感じます。 「山形というか田舎のいいところは、生産者さんが近くにいて、きちんと顔が見えること。作った人から直接受け取って使うって、都会だとまずできないでしょう。そうやって、土地のいいものを集めて作れるのが田舎の良さだと思っています」。 山形の佐竹さんにしか生み出せない美味の噂は、だんだん全国区へと広がっています。  

 

左上:パルミジャーノがたっぷりとかかった「自家製クレソンのサラダ」¥1,300。クレソンは佐竹さんのお父さんが育てている畑で採れたもの。さっぱりとした辛味と苦味は、ハムの合間に食べるのにちょうどいい。
右上:「自家製ハムサラミの盛り合わせ18種のせ」(2名分)¥3,000〜¥3,400。加熱系が10種、非加熱系が8種、それぞれ2枚ずつお皿にのった大ボリュームのメニュー。酸化をできるだけ防ぐため、オーダーが入ってからスライスする。
左下:お店の軒先にある冷蔵熟成庫。大江町の実家にはさらに巨大な熟成庫があり、常時40種類がその時を待っている。
右下:「自家菜園バジルのジェノベーゼ」\1,700。夏に採れたバジルをフレッシュなまま加工し贅沢に使用した一品で、とても香りがいい。鮮やかな緑色は混じりっけなしの100%バジル由来。

 

     

SHOP DATA

店名 IL COTECHINO(イルコテキーノ)
住所 山形県山形市七日町四丁目1-32 松源ビル1F
電話番号 023-664-0765
営業時間 18:00〜23:00
定休日 水曜 (祝日の場合は営業、翌木曜定休)
Webサイト http://ilcotechino.com/

 

  山形・村山地方の旅では、絨毯づくりに代表される山形人の粘り強さと美意識を、ところどころで感じ取ることができます。四季折々で美しい景観を見せてくれるこの土地で、ぜひそれを体感してみてください。    

 

色鮮やかな山形の風景にさらなる彩りを加える、フィアット山形

  土地柄、車が必需品だという山形。フィアット山形には、老若男女問わずいろんなお客様が来店します。中でも取り回しの良いコンパクトカーは、道幅が狭い山形において、絶対条件に挙げられる方も多いそうです。「かわいいは正義です」と強調するセールスマネージャーの今井智之さんは、春夏秋冬で全く異なる山形の色に、鮮やかなイタリア車はとても映えると自信をもって答えてくれました。一家に一台どころか、一人一台の家庭も多い山形。最初はデザイン性に惹かれてセカンドカー候補として考えられている方も、最終的にはフィアットの機能面に満足されているようです。

 

左がセールスマネージャーの今井智之さん。広々とした駐車場を構えるフィアット山形。

 

SHOP DATA

店名 フィアット山形
住所 山形県山形市東青田4丁目1-3
電話番号 023-628-0630
開店時間 9:30~18:30
定休日 水曜
Webサイト https://yamagata.fgaj-dealer.jp/fiat/

 

 

MIJPとは?

イタリアでは「アルチザン」、日本では「職人」と呼ばれ、 それぞれの優れた伝統文化とその技術を受け継ぐとともに、 日常の中で実際に使われ、愛される「ものづくり」に魂を込めている人々がいます。

イタリアの「ものづくり」文化を代表するFIATでは、 日本の文化ともっと交流し、もっとCuore(クオーレ:心)を通わせ合いたいとの想いから、 ひとつの特別なプロジェクトを立ち上げました。

それは、日本の「ものづくり」文化継承を目的にするNPO法人 「メイド・イン・ジャパン・プロジェクト」とのコラボレーションによって、 日本の優れた伝統工芸品に、新たな光をあてる活動です。

文化が出会い、心がつながり、笑顔を育んでいくこの取り組みに、 これからも、ぜひご注目ください。