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半世紀たっても色あせない500Fの魅力|FIATオーナー紹介

山中湖の湖畔からほど近くを駆け巡るのは、愛らしいルックスと楽しげなエンジン音を備えた1969年式の旧い車。木々が色づきはじめた秋の山道を彩るまっ赤な500F(チンクエチェント)です。

500F は1957年のNUOVA 500発売時より大幅にバージョンアップして1965年に誕生し、日本ではルパン三世の愛車として活躍する姿でも知られるモデルです。誕生から半世紀、50年以上を経た今も新鮮な魅力を放ちつづけています。

 

この500Fのオーナーは渡邉優さん。ちなみに本職はプロの尺八奏者です。和楽器の音楽レーベルも手がけ、古典作品の演奏だけでなく現代の幅広い楽曲も演奏するなど、尺八の新たな可能性を広げながら活動されています。車のミーティングイベントによく参加されるそうですが、その際には和装で500Fと並び立ち、尺八で『ルパン三世のテーマ』を演奏することも!

今回取材に伺った山中湖のご自宅の奥には、天井高8メートルを誇るこだわりの録音スタジオ「ミュージックイン山中湖」も併設。近隣で車のミーティングが開催されるときは仲間たちが集って宿泊することもあるそうです。

 

 

ベスパに通じるフィアットの魅力

もともとはクルマよりもバイク好きだったという渡邉さん。過去には多くのヴィンテージバイクを乗り継ぎ、トライアル競技にも参加し、バイクに関する著書も3冊手がけるほどにのめり込んでいたといいます。中でもイタリアのスクーター「ベスパ」には夢中になり、サイドカー付きなどさまざまなタイプに乗ってきたそう。

そんな渡邉さんにとって500Fの魅力は、かつて偏愛してきた「ベスパっぽい」ところ。「エンジンが動いていることが伝わってくるんです。映画『紅の豚』の複葉機を彷彿させるような……そしてどこかベスパと似た感覚もありますね」と渡邉さん。

 

500Fとの出会いは5年前にさかのぼります。「バイク仲間だった修理屋さんで修理中の500Fを見かけていたんです。ある日たまたま売りたいという話を聞いて即決した」とのこと。「500Fの前はウーズレイホーネットMK-Ⅲなどずっと英国車に乗っていて、同好のミーティングイベントにも参加していたので、急にフィアットに乗り換えて裏切り者みたいな」と苦笑い。

「英国車とイタリア車はミーティングイベントの雰囲気も車の乗り心地もまったく違います。イタリア車に乗っていると英国車は正統派でもう普通というか。500Fはベスパと同じで乗り手を選ぶ独特のクセがあり、そこがおもしろいですね」

 

半世紀前の車だけに、乗りはじめてからの5年間で故障などのトラブルも数知れずですが「趣味だからいいんですよ」と渡邉さんは笑い飛ばします。

「よく止まるので保険屋さんには申し訳ないです。現行の500だとこんな心配もないんでしょうが……」と殊勝な言葉をつなぎながらも、「いろんな車に乗ってきましたが、いまのところこのまま乗り続けるつもりです」とやっぱり500Fに執心の様子。

「イタリアではいまもどんな部品でも作られているから、直しながら乗るって感じかな」というエピソードからは、イタリアで500が時代を超えて愛されている様子も伺えます。

 

 

500Fは内装も走りも魅力的

500Fの内装でまず目を引くのが、鮮やかなインパネとシングルの丸型メーター。とにかくかわいくて、運転が楽しくなるデザインのエッセンスは、現代の500にもしっかりと引き継がれています。クーラーはついていませんが、暑い日にはサイドミラー脇の三角窓を開けると幾分涼しいそうです。

シートに腰掛けてみると、想像以上に身体と車の一体感を感じます。「コンパクトだけど窮屈じゃないでしょ。椅子にはリクライニングもないけれど、座った感覚がしっくりくる。欧州車は腰掛ける部分が深くて、総じて座り心地がいいんですよね」と渡邉さん。

 

気になる燃費については「いいですよ」と即答。「リッター18kmぐらいは走ります。軽いですからね。ボアアップしているので、坂道も元気に走ります。ボアアップしてなければたぶん20kmはいくと思いますよ」と現代の車にも劣らない燃費の良さにも驚きです。

 

 

こんなにコンパクトな500Fで車中泊!?

500Fにタープを張って、自家焙煎したコーヒーを楽しむ渡邉さん。普段はちょっとした買い物などで活躍しているという500Fですが、実は何日かかけて遠出できるように手が加えられています。なんと車の中で足を伸ばして寝ることもできるんです。

「僕の500Fの一番の特徴はこの車中泊仕様ですね。昔は妻も一緒に乗ることもあったんですが、いまじゃそんなこともないので(笑)。助手席はいらないなということで、そこで寝られるようにカスタムしました」

 

寝ながら動画を見られるように、スマホスタンドまで装備と至れり尽くせりな快適仕様。特製ベッドは助手席を取り外して踏み台を置いて、その上に板を敷いただけなので、現状復帰も簡単です。板の下や運転席の後部など収納も意外とたっぷりで、バッテリーやコンバーターも搭載し、電気毛布を使ったりご飯を炊いたりできるそう。

「ミーティングの帰りってたいてい眠くなるので、パーキングでちょっと寝たことはありますがまだ遠出はできていません。春になったら何泊かしたいと思っています」

いよいよ冬本番を迎える山中湖。500Fと旅する雪解けが待ち遠しい師走です。