フィアットの代表的なモデル500(チンクエチェント)、そしてカブリオレタイプの500C(チンクエチェント シー)といえば、ころんとかわいいカタチのボディデザインが特徴ですが、内装のデザインも負けじとユニークなことをご存じですか? 500や500Cに試乗して、その内装に惚れ込む方も少なくありません。
今回は、イタリアで学び、働いた経験を持つインテリアデザイナーである、デザインスタジオ「THE TRIANGLE.JP」の大田昌司さんに500Cのインテリアをご覧いただきながら、その魅力について伺いました。
イタリアでは現行の500や500Cはもちろん、昔の500(Nuova 500)も多く走っていて、そのデザインの遺伝子がしっかりと受け継がれていることを感じます。
内装に関しては、やはり外観との一体感が魅力です。まるで外と内でファッションのコーディネートを楽しむような、そんなところもイタリアらしいなと。
とにかくかわいいデザインなんですが、大人が乗るのにふさわしい上品さも備えています。たとえばニュアンスのあるカラーや質感を重視した素材選びなどはすごくセンスがいいですよね。
また、インストルメントパネルの光沢感のある素材使いや随所にあしらわれたクロームのパーツなど、鏡面の使い方がすごく上手い。鏡面はともするとギラギラした印象を与えてしまうので、マットな素材とのコンビネーションでバランスがとられている。空間の中で必要な場所に必要な素材が吟味されています。
光沢感のあるインストルメントパネルは、外観(エクステリア)とリンクしたカラーリング&デザイン。ボタンやメーターも先代のNuova 500を彷彿とさせる。
またボタンからドアノブ、ディテールにいたるまで徹底して、古き良きデザインを昇華して採用しているところもすごく好印象です。デザインした方の「残すべきものは残す」という意志が強く感じられます。そんなところも、ちょっと頑固なイタリア人気質でしょうか(笑)。
デザインの統一感を守るために、たとえば吹き出し口でさえカタチを変えているんですよね。そのデザインである必然性に対する強いこだわりがある。空間にいて違和感がないことってすごく大事で、そこが突き詰められているんです。僕自身が仕事でインテリアを設計するときにも、意識的に演出する違和感はいいのですが、気持ち悪さを感じるような違和感が出ないようにミリ単位で検証を重ねています。
あらゆるディテールに徹底して丸みを帯びさせた、触れたくなるようなデザイン。随所にあしらわれたクロームのパーツでファッショナブルな印象に。
曲線が多いことで、デザインの主張が激しくないのもいいところです。たとえば丸いヘッドレストは見た目がかわいいのはもちろん、後ろの人が前を見るときにもあまり気にならない。500も500Cもコンパクトなクルマですが、こういった一つひとつのパーツへのこだわりを積み重ねることで窮屈さを感じさせないんですね。
丸いヘッドレストはデザインのアクセントとしても、空間の有効活用としても合理的。
クルマの内装というのはリビングとは違うんですよね。やすらぎが感じられるというだけでなく、居心地の良さと高揚感を両立していることが大切です。外と内の中間のような場所、500や500Cはまさしくそんな空間になっているのではないでしょうか。
シートはチェック柄、フロアマットは500のロゴのパターンが配されている。
僕がインテリアを設計するときに念頭に置いているのは、「楽しさは正義」だということ。そこに足を踏み入れるだけでワクワクする空間であることを大切しています。その感覚はバーチャルでは味わえませんから。
そしてこの500Cにも、乗って初めて得られる楽しさがあります。ぜひ一度、500や500Cの運転席に座ってイタリアデザインの魅力を体感していただきたいですね。
大田昌司
1985年福岡県生まれ。高校卒業後にイタリアに渡り、ミラノのSCOULA POLITECNICA DI DESIGNに入学。2005年の卒業後はイタリア国内のデザイン事務所に勤め、2008年に帰国し、山本達雄デザインに入社。2014年に退社し、独立。2017年よりインテリアデザイナーの呉勝人氏とともに、デザインスタジオ「THE TRIANGLE.JP」を設立。「もてなし」「しつらい」「ふるまい」といった日本人の美意識に響くデザインを追求している。
THE TRIANGLE.JP
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