文=曽宮岳大 写真=荒川正幸
NHK大河ドラマ『西郷どん』でいま再び脚光を浴びている鹿児島。時の薩摩の英雄、島津斉彬(なりあきら)が「日本を強く、豊かに」との想いを強め、実現を目指した取り組みが“集成館事業”。外国との対等な関係づくりのため軍備を強めると同時に、新たな産業の育成や貿易品の開発にも力を入れた、藩をあげての事業でした。その貿易品のひとつとして生み出されたガラス工芸が薩摩切子。当時、江戸にすでに存在していた江戸切子が透明ガラスだったのに対し、薩摩切子は色被せ(いろきせ)ガラスを採用していたのが大きな特徴。色鮮やかで絢爛な模様を取り入れたのは、日本のものづくりと西洋的な視点の融合を図ったためと伝えられています。優美なガラス工芸には日本と外国の橋渡し的な想いが込められていたのです。
フィアットがNPO法人メイド・イン・ジャパン・プロジェクトとコラボし、日本の優れた工芸品に光をあてるプロジェクト。第12弾は、薩摩切子の産地とその魅惑の輝きを生んだ土地の名所をめぐります。
左:江戸時代に作られた薩摩切子
右:1851年に薩摩藩主に就任した島津家28代島津斉彬
撮影協力:尚古集成館
さて、薩摩藩渾身の一大事業としてスタートした薩摩切子ですが、1858年に斉彬が病没し、薩英戦争(1863年)でガラス工場も焼けてしまう衰運に見舞われます。そして明治10年ごろに身を潜めてしまいました。一度は幻と化した薩摩切子ですが、約100年後の1985年に再び息を吹き返したのです。
1985年に株式会社島津興業により、ゆかりの地である鹿児島市磯に設立された薩摩切子工場。
再興を果たした薩摩切子は江戸時代と同じ地域、鹿児島市磯地区の島津興業 薩摩切子工場で作られています。復刻の際にその中心人物として白羽の矢が立ったのは、美大を経て東京のガラス研究所の卒業を間近に控えていた中根さん。中根さんは「100年以上も作られなかったものをゼロから復活させるとするプロジェクトの面白さに惹かれた」と当時を振り返ります。
ガラスの専門学校を卒業後、島津興業に入社し、薩摩切子の復元事業に尽力した中根さん。薩摩切子復元25周年に島津家第32代当主島津修久氏より「櫻龜(おうき)」の命号を受けました。現在は島津興業取締役 薩摩ガラス工芸部長を務めておられます。
「鹿児島に来て初めて本物の薩摩切子を見た時、その気品と風格に魅力を感じ、自分で作れるようになりたいと思いました。初めの頃は、色の厚みを操る被せガラスの難しさを痛感すると同時に、天然の原料を使って作業していた江戸時代の職人たちは今の何十倍もの苦労をしただろうと想像したりもしました。もし薩摩切子がそのまま続いていたらどのようなものが生まれていただろう。想像を膨らませながら、100年のブランクをつなぐ気持ちで取り組んできました。そしていまようやく“現在”にたどり着けたと思えるようになったので、今は現代の生活にあった製作や、未来に向けどう変化させるかという取り組みを中心に商品開発を行っています」
薩摩切子復元プロジェクトは、江戸時代の作品を再現することからスタートしました。その段階を経て、徐々に現代の色やアレンジを加えた様式を生んでいきます。
現代ならではの「2色被せ」の技術を用いた作品。透明ガラスと2色被せの計3層からできています。
複雑な工程を緻密にこなす日本のものづくりと西洋を思わせる華やかなデザインで人々を魅了する薩摩切子。斉彬の夢半ばで一度は途絶えた想いは100年を経て、いま再び新たな発展を遂げているのです。
ギャラリーショップ 磯工芸館では、薩摩切子のさまざまな作品の展示・販売を行っています。
SHOP DATA
店名 | 島津薩摩切子ギャラリーショップ 磯工芸館 |
住所 | 鹿児島市吉野町9688-24 |
電話番号 | 099-247-8490 |
営業時間 | 8:30〜17:30 |
定休日 | 年中無休 |
入館料 | 無料 |
Webサイト | http://www.senganen.jp/omiyage/kougeikan/ |
磯工芸館に隣接した薩摩ガラス工芸では、ガラスの成型から加工、石かけ、磨きといった薩摩切子の完成までの流れを自由に見学できます。
SHOP DATA
店名 | 薩摩ガラス工芸 |
住所 | 鹿児島市吉野町9688-24 |
電話番号 | 099-247-2111 |
営業時間 | 午前9:00〜12:00 午後13:00〜17:00 |
定休日 | 月曜日・第3日曜日(月曜日が祝日の場合は火曜日・第3日曜日が祝日の場合は第4日曜日) |
入館料 | 無料 |
Webサイト | http://www.satsumakiriko.co.jp/ |
薩摩切子の工場と隣接する仙巌園(せんがんえん)。かつての薩摩藩の隆盛がうかがえる美しく広大かつ豊かな歴史を感じる世界遺産です。17世紀に島津家の別邸として築かれた仙巌園の施設内には、かつて大砲の製造を行った反射炉や蒸気機関の研究施設、機械工場、ガラス工場などからなる工場群“集成館”を包有しました。
仙巌園には今も反射炉の基礎が残リ、江戸末期の面影に触れることができます。また、島津家の藩主たちが過ごした別邸もあり、当時の大名家の豊かな暮らしを伝えています。眼前には桜島の素晴らしい眺めも。一度は訪れたいスポットです。
反射炉は、鉄を溶かして大砲を鋳造するための施設。島津斉彬が海防のため自力で開発に乗り出した。2015年に世界遺産(明治日本の産業革命遺産)に登録。写真左は反射炉を再現したもの。写真右は、反射炉で作られた鉄製の大砲を復元したもの(2017年12月15日に移設されています)。
島津家歴代が過ごした御殿。1884年に改築された建物が当時の面影のまま残っています。南側の部屋からは桜島が一望でき、大名たちが見ていたものと同じ景観を今も楽しめます。
左:かつて御殿の正門として使用されていた錫門(すずもん)。当時は身分の高い人しか通ることを許されなかったとか。NHK大河ドラマ『西郷どん』のロケ地にも選ばれました。
右:島津家800年の歴史が詰まったミュージアム 尚古集成館本館。初期の薩摩切子など貴重なコレクションが見られます。
SHOP DATA
店名 | 仙巌園 |
住所 | 鹿児島市吉野町9700-1 |
電話番号 | 099-247-1551 |
営業時間 | 8:30〜17:30 |
定休日 | 年中無休 |
入館料 | 大人¥1,000、小中学生¥800 |
Webサイト | http://www.senganen.jp/ |
参考文献
シリーズ実像に迫る011 島津斉彬 松尾千歳著 戎光祥出版株式会社
かごしま近代化文化遺産 江口淳司・原田茂樹著 南日本新聞社
リストランテ パッソは、鹿児島市慈眼寺町にある小さなレストラン。決まったメニューが存在せず、毎日仕入れるその時々の新鮮な素材に合わせてコースメニューを作り、お客さんを満足させている地元で人気の本格イタリアンです。素材を厳選しており、野菜は基本的に農薬を使わない地元の自然栽培のものを使用するこだわりよう。
さらに、お客さんとの何気ない会話を調理のヒントにするというきめ細かな心配りは、ご夫婦で営む小さなお店ならでは。シェフの奥さまはお客さんから聞いた料理の好みや記念日、ライフステージなどを“お客さまノート”にマメに書き込んでおき、次にそのお客さんが来店した時にシェフがそうした情報を元に料理にアレンジを加えるという夫婦の連携が、美味しさをさらに高めているのです。初めて訪れても美味しく、もう一度行くともっと美味しい。そんな誰にも愛されるお店なのです。
左上:この日の前菜は、鹿児島山川町の地アジ&長崎の干しカツオのマリネ、鹿児島春山野菜のサラダ仕立て、カキのフリット&北海道産帆立貝柱、トリッパとマッシュポテトのオーブン焼き。
右上:契約農園で作られるオーガニック抹茶を混ぜ合わせたペペロンチーノ。トッピングは長崎県産アカイカと自家製ドライきのこ。
左下:メインは鹿児島県産黒毛和牛イチボ肉(ランプ)のロースト、黒毛和牛の頬肉のワイン煮ブラザード。
右下:デザートは自家製のガトーショコラ、ソースは自家製塩キャラメル。完熟バナナとバニラのジェラート、ブリュレ。
ランチコースの料金はスープ付きで2500円(今回は黒毛和牛を選択したので+500円の3,000円)。
SHOP DATA
店名 | リストランテ パッソ |
住所 | 鹿児島県鹿児島市慈眼寺町18-7 |
電話番号 | 099-297-5565 |
営業時間 | ランチ11:30〜14:00(コースは13:30まで) ディナー18:30〜21:00 |
定休日 | 月曜日(祝日の場合は火曜日) |
Webサイト | https://hitosara.com/0005009099/ |
鹿児市をドライブするならぜひ立ち寄ってみたいのが市街地の高台に位置する城山展望台。無料駐車場から徒歩5分程度の展望台からは市街地と桜島が同時に望めます。ナポリと姉妹都市盟約を結んでいる鹿児島市ですが、同市はかねてから桜島を望む景色がナポリ湾のそれに似ていたことから「東洋のナポリ」と呼ばれていたという結びつきも。鹿児島とイタリアをつなぐロマンチックな美観をお楽しみください。高台なので冬場は暖かくしてお出かけを。
小高い丘の上にある城山展望台。500Xはカーブの連続する道も元気よく走ってくれました。
SHOP DATA
店名 | 城山展望台 |
住所 | 鹿児島県鹿児島市城山町 |
入館料 | 無料 |
Webサイト | http://www.kagoshima-yokanavi.jp/data?page-id=2497 |
南九州エリア唯一のフィアット正規ディーラーとして、鹿児市全域および宮崎県を中心としたお客さまのカーライフをサポートしているフィアット鹿児島。クリーンで明るいショールームはフィアット車の展示や試乗車はもちろん、イタリアの本格コーヒーマシンやプレイルームもあり、家族で訪れる週末スポットとしても温かく迎えてくれます。
「鹿児島市はナポリの姉妹都市。イタリア車を通じて、クルマのみならずイタリアの文化や香りを発信しています。ぜひお気軽に遊びにお越しください。スタッフ一同お待ちしています」
SHOP DATA
店名 | フィアット鹿児島 |
住所 | 鹿児島市東郡元町12-23 |
電話番号 | 099-252-0338 |
営業時間 | 10:00〜19:00 |
定休日 | 第一水曜日・毎週火曜日(祝祭日の場合は営業) |
Webサイト | http://kagoshima.fgaj-dealer.jp/fiat/ |
MIJPとは?
イタリアでは「アルチザン」、日本では「職人」と呼ばれ、 それぞれの優れた伝統文化とその技術を受け継ぐとともに、 日常の中で実際に使われ、愛される「ものづくり」に魂を込めている人々がいます。
イタリアの「ものづくり」文化を代表するFIATでは、 日本の文化ともっと交流し、もっとCuore(クオーレ:心)を通わせ合いたいとの想いから、 ひとつの特別なプロジェクトを立ち上げました。
それは、日本の「ものづくり」文化継承を目的にするNPO法人 「メイド・イン・ジャパン・プロジェクト」とのコラボレーションによって、 日本の優れた伝統工芸品に、新たな光をあてる活動です。
文化が出会い、心がつながり、笑顔を育んでいくこの取り組みに、 これからも、ぜひご注目ください。
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