フィアットが新潟県・燕市とコラボレーションし、壮大なキャンバスに未来への想いを描く田んぼアートプロジェクト。5月に田植えを行った苗は、7月中旬にはキャンバスの絵が鮮明になるまで成長しました。7月4日に日本で初お披露目された『500e』の姿もはっきり確認できます。ではこの田んぼアートの実現までにどのような準備が行われたのか。また田んぼアートに使われている食米「新之助」とはどのような品種なのか。今回は田んぼアートの舞台裏に迫ります。
そもそも田んぼアートは、どのような目的で実施されてきたのでしょうか? 燕市の場合では、市やJA(農業協同組合)などから成る燕市景観作物推進協議会が中心となり、15年前から毎年田んぼアートに取り組んでいます。子どもをはじめ地元の人たちに田植えや稲刈りを経験してもらい、実際の農業体験を通じて、地域の交流と農業への理解促進を図る行事として行われてきたようです。フィアットもそうした取り組みに賛同し、地元のフィアット正規代理店であるフィアット新潟のお客さまや地域のボランティアの方々、FCAジャパンの関係者らが交流を深めつつ田植えを行い、さらに全国のフィアットファンの方々にもこの取り組みと芸術性を見ていただきたいとの想いから、公式WEBサイトやYouTubeを通じて田んぼアートの成長具合を配信しています。
▲田んぼアートの田植えの様子。写真左は、フィアット アグリ アート プロジェクトのコーディネーターを務めてくださった株式会社つくるの山田立さん。
さて8月上旬頃に見頃を迎えるこの田んぼアート。下準備が始まったのは、2020年の秋頃でした。場所探しに始まり、どんな図案を描くのかの検討が始まりました。図案が決定したのは1月。つまりこの時点で田んぼアートに日本やイタリアの象徴的な風景と共に『500e』が描かれることも決定しました。2021年1月に実施された新春記者発表でFCAジャパンのポンタス・ヘグストロム社長は、『500e』を欧州以外の地域では世界に先駆けて日本に導入することを宣言。この早期の決定があったからこそ、田んぼアート上での『500e』のお披露目が実現したのです。
▲2021年7月4日(日)にフィアット ピクニックの会場で国内初披露されたフィアット初の電気自動車『500e』。
燕市では以前より田んぼアートが行われていましたが、市役所前の水田での実施は初の試みでした。それゆえプロジェクトは様々な困難に直面しましたが、燕市の農協、土地改良区、農家さんなど様々な方々のご協力をいただき、問題をひとつずつ乗り越えていったのでした。
絵柄から図面を起こし、その図面を元に測量士さんの指示のもと、田んぼの中に杭を打っていきます。その数、実に2600本。その測量技術には、燕市で培われてきた田んぼアートのノウハウが生かされています。色苗を植える場所は、その周囲を杭とテープで囲い、その囲われた範囲に等間隔で色苗を植えていきます。
▲図面を元に測量士さんが苗を植える位置を計測し、田んぼの中に目印の杭を打っていきます。その杭の数は全部で2600本!
▲測量でマークされた場所に、決められた色の苗を植えていきます。作業はすべて手作業で行われます。
通常の田植えと異なるのは、1本1本苗を手で植えていくこと。手作業だからこそ、機械では成し得ない綿密な色分けが実現できるのです。初めての場所で行う初めての作業。しかも初回にもかかわらず難易度の高い絵柄を目指したため、測量士さんからは「本当にこれでやるのですか?」と念を押されたという裏話も。かくして通常よりも多い6色の苗を用いた、フィアットオリジナルの田んぼアートが作られていきました。
▲全6色の苗を使って作られるフィアットの田んぼアート。豊富な色合いにより表現の幅が広がりました。
さてこの田んぼアート。多くの面積を占める緑の苗には、「新之助(しんのすけ)」という新潟のお米が使われています。新潟といえばコシヒカリを思い浮かべる方が多いと思いますが、新之助とはどのようなお米なのでしょうか? 実は新之助は、昨今の高温化による環境変化や、食の多様化に対応することを背景に新潟県農業総合研究所が中心となって開発した新品種なのです。
▲温暖化は農業に大きな影響を与えます。日本一の米どころである新潟も例外ではなく、高温化による米の品質低下や作業の効率低下といった問題に直面しているといいます。
この新之助について、フィアットの田んぼアートに協力いただいた農家の佐藤啓典(けいすけ)さんにうかがいました。佐藤さんは、新之助のほかにも「コシヒカリ」や「こしいぶき」「ゆきん子舞」などを栽培していて、2017年に新之助が登場した時も当初から着手したそうです。
新之助は晩生品種で、コシヒカリに比べて収穫時期が遅く、暑さに強いのが特徴。佐藤さんによると、「コシヒカリと収穫時期をずらして獲れるメリットが大きい」と言います。というのは、昨今の温暖化の影響で真夏は「暑過ぎて作業に支障が出るだけでなく、お米の品質も下がってしまう」のだとか。コシヒカリの収穫時期は8月上旬からお盆にかけての最も暑い時期。それに対し、「新之助は穂が出るのが遅いため、一番暑い時期を避けて収穫できる」と佐藤さん。さらに「収穫時期が遅いと台風に直面する可能性があるが、強風に対しても稲の背が低いため倒れづらい」と、その強さを実感しているそうです。
▲新之助の田園を走るフィアット500。
では、味の方はどうなのでしょうか? 佐藤さんによると新之助の特徴は、「粒がコシヒカリよりひと回りくらい大きい」。そして食感については「モチモチしているのが特徴で、初めての人が食べても美味しいと言ってもらえる」と好評を得ているようです。
佐藤さんのお話をうかがい、日本一の米どころである新潟においても温暖化の影響が深刻で、農家さんを苦しめているという現実に胸が締め付けられました。しかし、そうした環境の変化に立ち向かい、コシヒカリと差別化された味も強みに、新潟の新たなブランド米として登場した新之助。そのスピリットは、持続可能なモビリティを目指して『500e』を投入するフィアットの取り組みに通じるものがあると感じました。困難を共に乗り越えていきたいですね。
▲まもなくクライマックスを迎える田んぼアート。
さて、8月に入るとフィアット田んぼアートはいよいよクライマックスを迎えます。ピンクと紫を彩る穂に色がつけば、『500e』のタイヤやルーフ、富士山の稜線、桜の花びらがくっきりと描かれる予定。最終章まであと少しです!
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