栃木県宇都宮市でイタリアンレストランを営む池田俊一さんは、10年ほど前に『500C(チンクエチェントシー)』を購入し乗り続けています。さらにはお店の中に『500(チンクエチェント)』のパーツを集めてフロント周りのオブジェを作り上げてしまうほど愛しているご様子。そこで今回は池田さんに『500』の魅力について語っていただきました。
初めて購入した軽自動車以降、気に入った欧州車を乗り継いできた池田さんは生粋のエンスージアストです。しかも、乗る以上に自ら手を入れてメンテナンスまで行う手先の器用さも持ち合わせています。ご自身も「クルマ好きというより、メカ好きなんでしょうね。長距離ドライブはあまり得意ではありませんし、それよりも自分でクルマをいじるのが好きなんです」とおっしゃいます。フィアットを最初に意識したのは『ローマの休日』に出てきた『トポリーノ』。その後『ルパン三世』を見て、そこに出てくるマニアックなクルマ達とともに、『Nuova 500(ヌォーヴァ チンクエチェント)』に惹かれていったそうです。
▲池田俊一さん
そんな池田さんの目に留まったのが『500(チンクエチェント)』でした。「当然クルマが好きなので、新車が出るとチェックしていましたし、出た当初から『500』も知っていました。その後、ツインエア エンジンが発売されたのでこれは良いなと思ったのです」と池田さん。「もともとメカ好きなので、エンジンから伝わって来る振動やメカニカルノイズを聞きながら走らせることに魅力を感じていました」とのことでさっそくクルマを見に行ったそうです。
「そのときは4気筒とツインエア エンジンの2種類でしたが、どうしても2気筒のツインエア エンジンの方が欲しくて」と当時を振り返ります。さらに「何とパール ホワイトなんです。ほかの白とは違うボディカラーでこれも気に入りました」と池田さん。
▲500C
デザインについても『Nuova 500』の雰囲気を感じさせていて「よくここまでできたなと思います。角度によって可愛らしさがありますよね。例えば女性が左の下から写真を撮ってほしいとかお気に入りの角度があるように、この『500』にも自分の好きなポイントがあります。例えばフロントではちょっとしたカーブやでっぱりがあって、そこからくる可愛さがありますよね」とのことでした。
そして、通常のルーフとオープントップの2種類のボディバリエーションはオープントップの『500C』を選択。池田さんによると「以前持っていたクルマのルーフがキャンバストップで、ルーフを開けるのが好きだったのです。サンルーフとは違いもっと解放感がありますが、かといってフルオープンではないところが良いんです。フルオープンは、格好は良いんですけど実用的にはちょっと厳しいですよね」と選択理由を話してくれました。
フルオープンの場合は幌などを畳む場所が必要となるので、荷室容量や後席スペースが犠牲になってしまうのです。『500C』を実際に乗ってみると「電動で開閉できるのはとても良いですね。走りながら安全に開閉できますから」と、とても気に入っているようでした。
いま『500C』は奥さまが通勤などにお使いですが、購入当時は奥さま用の日本車がありましたのでクルマが増える形でした。その頃も手元に複数台あったことから奥さまからは「何台持つの?全部を一度に運転してみてごらんなさい」とまでいわれたそう。池田さんは「はい、ごもっとも」と。それでも、諦めきれなかった池田さんは購入に踏み切りました。しかし、ちょうどいま経営されているお店を立ち上げて忙しくなった頃と重なり「1年ぐらいは乗らずにずっと屋根の下に置いておいたんです。ですので、1年半ぐらいで500km乗ったかな。そうしているうちに、家内が乗っていたクルマが古くなったので、それと入れ替えで『500C』に乗るようになったんです」といまに至る経緯を教えてくれました。
実は池田さんは、お店も本当はご自身の手で建てたかったそうです。しかし「家族に危ないなどと反対されてしまったので、自分でデザインを考えて、設計者に具現化して建ててもらいました。そんなこともあり、自分のほとんどの時間はお店のことでいっぱいでしたので、買ったのはいいですが、乗る時間がなくなってしまったのです。でも本当に欲しかったんですよ。乗るというよりも、所有したい、ツインエア エンジンを自分のものにしたかったんです」と熱い思いを語ります。その心境を池田さんは「ドライブするよりも、機械として、モノとして置いておきたいんですね。おもちゃを買ってもらったみたいなイメージです。ちらっとでも見えたら満足です」と楽しそうに話します。
『500C』というおもちゃを手に入れた池田さんは、それだけでは飽き足らず、お店にオブジェも作ります。
「そもそものきっかけは、バブル期には色々なクルマのフロント周りやリア周りだけがお店に飾られていたものです。そのイメージが頭の中にありました」そして「(お店は)一人ですべてをこなしているのでカウンター周りで精一杯なんです。そこで、以前テーブルとイスを置いていたところに好きな植木や、趣味のものを置き始め、やはりクルマ好きですからこのアイディアを思い立ちました」
ちょうどコロナ禍でお店を閉めていたこともあり、ネットオークションでコツコツパーツを集め、元々の手先の器用さもあり、一人で1年かからずに完成。
「溶接で組み立てて、後ろ側は木のフレームで組んであります。よく見るとタイヤも半分にしてくっついているんですよ」とその出来栄えは素人目にも素晴らしいものです。
▲500のパーツを使って組み立てたフロントのオブジェ
「やはり好きなものに囲まれたいという基本的な欲求があるのです。だから『500C』も乗る時間がなくても買ったのです。そういう意味では自分の手が届くところに、見えるところに『500』(の顔)があるのは嬉しいです。もしお店をやっていなかったとしても、家の中に置くところさえあれば、多分置いていたと思います」と相当の思いが詰まっているようです。
池田さんの手元に『500C』が来て10年近くがたちましたが「全然古くなったなという感じはしませんね」と池田さん。実際に乗るとパドルシフトがお気に入りとのこと。「信号で減速の時に使ったりしています。マニュアルのクルマに多く乗って来たので、そういう操作が出来るのは面白いところですね」と乗っても満足そうなご様子です。
池田さんはイタリアンレストランをオープンしてから、頻繁にイタリアを訪れているそうです。
「ツアーに申し込むことが多いのですが、スケジュールが合わないときは、例えばホテルと飛行機のチケットだけ取って一か所に5日間居続けて歩き回っています。それだけでも違いますね。面白いものが見つけられれば、帰ってきてお店のメニューとかを作るときにその写真を使って参考にしたり」その写真はやはりクルマが多く写っているそうです。
「家内からは『Nuova 500』や今の『500』をまた撮っているといわれます。ただ、だんだん家内も感化されてきているようで、風景の中に『500』がいればそれを撮ってくれたりするようになりました。完全に染まっちゃっていますね。なんだかんだいっても、ついてきてくれている家内にはすごく感謝しています」と奥さまへの思いは忘れてはいません。
その奥さまも『500C』をお乗りになってから「私があまりにもエンジンの音とか、伝わって来る振動が良いねと言い続けているので、家内が他の人との会話で『音が良いのよねぇ』と、つい言っちゃったとか話しています」と奥さまもお気に入りの様子です。また「いままでサンルーフなどの経験はなかったようで、屋根が開くというのは彼女にとっては魅力のようです」とのこと。
池田さんも「天気が良い時には開けたいですよね。あえて全部開けて大きな荷物をそこから出し入れしてみたりして」と笑顔で語ります。たまに奥さまがクルマを使わないときは、お店の仕入れやちょっとした買い物などに乗っていくそうです。「ほかにもクルマはありますが、それらは全部単なるクルマなんですよ。たまたまそのクルマがうちに来ただけであって。でも『500C』は欲しくて買ったので違うんですよね。乗っていて楽しくなりますし、気分が上がります」と本当に笑顔でその雰囲気を思い出しながら話してくれました。
さて、池田さんはご自身を“ナルシスト”と表現します。
「自分が作った料理が人様の口に入るわけです。『どうだ、うまいだろう。食ってみろ』くらいの気持ちがないと作れないと思うんですよ。それが本当かどうかは別として、気持ちとしてね。ですから絶対に自分はナルシストで、むしろそうあるべきだと思います。だって、おどおどして作っていればお客さんには絶対わかるでしょう。自信を持ってお出しするということは、『自分が1番なんだ』と、自分のことが好きだからできるんです。そう考えると『500C』に乗っている自分が好きっていうことですかね」と池田さんはご自身を冷静に分析します。
「ですから、買い物のときにあえてルーフをオープンにして、そこからモノを入れてみたり。誰が見ているわけでもないんでしょうけれども『500C』に乗っていると主張したいんです」とのことでした。
『500C』を所有するようになって、池田さんの人生はこれまで以上に豊かになったようです。それはご本人も「間違いなくそうだと思いますよ。クルマは足だといいますが、足というのは、生活の一部です。ほかのクルマで出かけるのと『500C』で出かけるのとでは気分がまるで違います。ですからオブジェまで作っちゃったんです」とお話しするように、池田さんにとって『500C』はなくてはならない存在であり、大切な“おもちゃ”なのです。そして、このことが実現できているのは、時に厳しく、そして暖かく見守る奥さまがいらっしゃるからなのです。
Text:内田俊一(Shunichi Uchida)
Photos:濱上英翔
取材協力:株式会社ブレシア
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